2022年8月16日

Relay Essay

夏服の学生がはしゃぐ
とある駅の日常

佐久間 悠太 
株式会社 秀光 代表取締役社長

Quarterly OCEAN Vol.01

Relay essay



数年前にある地方のクライアントまわりをしていた時に、駅で高校生であろう年頃の学生が幸せそうにはしゃいでいた。自分もこのころは青春真っただ中で、むじゃきに駅ではしゃいでいたなぁと思いにふけっていた。今も昔も変わらない駅での平和な日常風景である。ただ、一点を除いては。


10月下旬のこの時期、30年前の私達は冬服ではしゃぎ、現代の彼らは夏服ではしゃいでいる。今は、10月下旬でもごく当たり前に社会人はクールビズ、学生は夏服で過ごしている。ごく当たり前のこの光景を目の当たりにし、30年の間に私達の生活様式に影響を与えるほどの気候変動が起きている事を、改めて強く認識することとなった。


私が代表を務める秀光は、長年金融機関の店舗づくりのお手伝いをさせていただいている。災害時には、いち早く現場に赴き、店舗復旧の対応を行っている。この行動は、企業として社会貢献の一環と考えている。金融店舗の復旧は、地域インフラの復旧につながるからだ。


近年、災害の質が大きく変わってしまった。九州の営業所では豪雨災害の対応が「夏の行事」になってしまい、この時期、営業車には災害対応グッズを装備している。ゲリラ豪雨や台風の進路の変化に伴い、今まで想定していない自然災害を考慮した金融店舗づくりを各地で求められるようになった。このような環境の変化や冒頭の「夏服の学生がはしゃぐとある駅の日常」が私に大きな危機感を抱かせるきっかけになった。


子供の頃見たテレビアニメ「未来少年コナン」は、核戦争による気候変動で地球が破壊された後の物語だった。「風の谷のナウシカ」も、人間の自然破壊により汚染された世界が描かれている。この二作品は、巨匠・宮崎駿の出世作であり、その後も彼は作品の中で「自然と人間の関わり」を描き続けている。公言はされていないが「自然破壊・地球環境問題と向き合わなければならない」というメッセージを彼は発信し続けていると、私は勝手に解釈している。「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」も、自然破壊・人口増加により、地球に住めなくなった人間が宇宙に活路を求める物語である。子供の頃、テレビアニメで見ていた地球の姿が、今、現実として姿を現し始めたのではないだろうかと、考え始めた。


映画「風の谷のナウシカ」監督:宮崎駿 (1984)

「— ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は数百年のうちに全世界に広まり巨大産業社会を形成するに至った。大地の富をうばいとり大気をけがし、生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は1000年後に絶頂期に達しやがて急激な衰退をむかえることになった。「火の7日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、複雑高度化した技術体系は失われ地表のほとんどは不毛の地と化したのである。その後産業文明は再建されることなく永いたそがれの時代を人類は生きることになった。」 (書籍 風の谷のナウシカ1 第一話冒頭文より引用)

(画像:スタジオジブリ公式HP https://www.ghibli.jp/works/nausicaa/より)


「十月の夏服」と「テレビアニメの世界の現実化」に象徴されているように地球温暖化、環境破壊が私たちの身近で重大な問題になった。個人としてはもちろんのこと、企業としてこの問題にどう向き合うべきかと考える時間も増えている。今までの社会構造のまま経済活動を続けたら、近い将来、確実に地球は壊れる。社会構造、世の中の仕組みを変えなければならない。一個人の利益、一企業の利益を追求しながら、地球を壊さない持続可能な経済活動、企業活動、個人活動をしなければならない。

人間が生きていると家庭からたくさんのゴミを出す。企業が活動しているとオフィスから大量の廃棄物が生まれる。無駄な家庭からのゴミ、オフィスからの廃棄物をなくすことは、一個人、一企業の努力で可能である。家庭でもオフィスでも多くの製品が使い捨てにされている。「使い捨て」とは人間生活を快適にするため、オフィスの経済効率化のために進んだ、人間の知恵である。だが、「使い捨て」が増えれば、「廃棄物」は増え、地球が壊れる。わかりきったロジックだ。


私が子供だった35年前は蕎麦屋、寿司屋、鰻屋などいわゆる「店屋物(てんやもん)」と呼ばれる出前が多かった。酒屋さんもビール瓶のケースや醤油瓶などを定期的に配達に来てくれた。(サザエさんでいう、三河屋さん)牛乳も毎朝瓶で配達されていたし、豆腐もタッパーを持参して買いに行ったものだ。食べ終わった食器、空き瓶は返却する。いわゆる「両面通行」のサービスが一般的だった。


一方、現代では、コンビニの出現、大手スーパーの普及、各種の配達サービスの多様化により、サービスは返さなくていい「一方通行」になった。食器はプラスチック容器に変わり、瓶はペットボトルに変わった。大手企業の経済合理性を優先した結果、「安くて便利」は達成された。しかし、それは未来への大きな代償を払っている気がしてならない。例えば、コンビニは生活する上で便利なお店ではあるが、たいていの製品はプラスチックの容器に入って販売されている。お昼ご飯を買うだけで、どれだけの使い捨ての廃棄物が出るだろう。ビニール傘が出現しなければ、あんなに道端に傘が落ちていることもなかっただろう。そもそも、骨組みのしっかりした傘を使用すれば、少しの風では簡単に壊れず長く使うことができる。

オフィス家具も「家具」ではなく「消耗品」になってしまった。コストはかかるが20年30年と長く使える製品と、コストはかからないが3年、5年で「使い捨て」になってしまう製品。どちらがメリットがあるかは語るまでもない。語るまでもない簡単なことが現実社会では実現できない。


「『良質なプロダクトを永く使う』という原点に戻る」というシンプルな行動(Action)が難しい。それは、これまで築き上げた社会構造・利益構造を変えなければ、このシンプルな行動ができないからだ。一企業人としてこのシンプルな行動(Action)ができる世の中の仕組みづくりに挑戦(Challenge)したい。次世代(Next)のための、環境(Environment)のための責務(Obligation)として。


Obligation

これが私たちの責務

Challenge

小さな事かもしれないけれど、私たちにとっては大きな挑戦である

Environment

これからの地球の環境を守るため

Action

今、私たちに出来ることを行動しよう

Next

次の世代に繋げるために


オフィスから廃棄物をなくす

オフィスファニチャーのサスティナブル・プロジェクト 「OCEAN」をはじめようと思う。


[この記事は、Quarterly OCEAN Vol.01に掲載された内容をweb用バックナンバー向けに再編集したものです。]